地元に帰って同窓会をすると、必ず話題になる昔話がある。
"鼻くそ学級会"の話だ。
小学校低学年の頃、僕のクラスで"鼻くそ学級会"が開かれた。
「クラスのしんじ君が鼻くそをほじるのをやめてくれません」と、ある女子グループが先生に訴えたのである。
そこで急遽、"鼻くそ学級会"が放課後に開かれた。
女子の言い分は、汚いので学校で鼻くそをほじってほしくないということ。
しんじ君の言い分は、どこでほじろうが俺の勝手だろということだった。
1時間みんなで真剣に話し合った末、最終的にしんじ君は「鼻くそは家でほじってきます」と言い、話は丸くおさまった。
このとき訴えた女子やしんじ君、そして他の生徒や先生も皆、非常に真剣だった。
この"鼻くそ学級会"の話が、同窓会をすると必ずと言っていいほど昔話の話題にあがる。
「鼻くそ学級会ってなんやねんwww」
「鼻くそは家でほじってきますってwww」
「そもそもしんじ何を訴えられてんねんwww」
とみんな爆笑である。もはや鉄板の笑い話だ。
当時女子に訴えられた本人も今となってはネタにするくらいである。
今年のお盆に地元兵庫に帰ったときも例外なく鼻くそ学級会の話になり、ここで僕は二つのことを思っていた。
一つは、「怒りと笑いは表裏一体」ではないかということ。
もう一つは、「人生は寄りで見ると悲劇なことでも、引きで見ると喜劇になりうる」ということ。
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僕はお笑い芸人の千原ジュニアが大好きなのだが、ジュニアがある番組でこんな話をしていた。
久しぶりに実家に戻ったら、飼っていた犬が死んでしまっていたと。
そこで「最後はどんな感じやった?」と聞くと、ジュニアの母が「食事中に、そんな話すな!」と怒って、台所に行ってしまった。
それを見ていた父が、ジュニアの耳元でこっそりと「カッチカチ」と言ったのである。
カッチカチ。最後は、カッチカチ、である。
番組にいたビートたけしは、「叙情的だし、最後がカッチカチってさ~。バカで凄く面白い」と言い、番組内でも盛り上がっていた。
"カッチカチ"と言われたジュニアも、父にそう言われたときは、おそらく笑わなかっただろう。母が怒ってしまったくらいだ。もちろん父も笑わす気なんてさらさらなかっただろう。
しかし、笑いが起こったことからわかるように、「笑いと怒りは、紙一重」で、愛犬が死んだということに対してクローズアップで見るととても悲劇的な話なのだが、一歩引いてロングショットで見ると喜劇へと変化するのである。
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ダウンタウン松本人志の人気番組「人志松本のすべらない話」のスピンオフ番組で「人志松本のゆるせない話」が生まれたのもおそらくそういうことなのだろう。
この番組を制作していたスタッフが意図的か無意識かはわからないが、「ゆるせない(怒りの)話は笑える!すべらない!」と会議でなったのでだろう。
ちなみにこれも千原ジュニアが言っていたのだが、ホラー映画の撮影現場は、爆笑の渦になるらしい。
『呪怨』では「この子の顔、白すぎだろ!?ワッハッハ」と。
貞子も冷静に考えたらテレビから出てきて「何してんねん!」って話である。
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最近電通の新入社員の女性が自殺してニュースとなっている。
今もどこかで苦しんで死にたいと思っている人はたくさんいると思うが、もし今の自分の環境がどんなに悲劇的なものであって、逃げ出してもいいので頑張って生きてほしいと願う。
冒頭に挙げたしんじ君が当時女子に訴えられた"鼻くそ学級会"について数年後にしっかりと笑い飛ばせるようになったみたいに、千原ジュニアが飼い犬の死を乗り越え、しっかりと自分の仕事場で活かすことができたように、
きっと何年後かにあのとき大変やったけど今思えばおもろかったな~と、あのときの挫折が今の自分に活きているなぁとなる日がきっと来る。きっとだ。
辛かったあの時を、不運な世の中を皆で笑い飛ばしてやろう。
人生は、クローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇なのだから。
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