思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

風俗嬢は彼氏にただでセックスさせるのか

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風俗嬢の友達に、彼氏とのセックスについて悩んでいると相談されたことがあった。

悩んでいると聞いて、彼氏とうまくいっていなくてセックスレスなのかなくらいに思っていたら、そうではなかった。


「普段お金をもらって仕事として、セックスをしている。
それなのに家に帰っても彼氏とセックスをするとなると、なんかおかしな感覚になるの」
「もちろん彼氏だからお金なんて取らないけど、それでもなんで無償でセックスしているのかわからなくなってきて、そんな卑しい自分が嫌なの」

そう言われた。聞くところによると、この悩みは風俗嬢あるあるらしく、周りの風俗嬢の子達も彼氏とのセックス事情で悩んでいると言っていた。

これを聞いたとき、よくある恋愛相談とは違い悩みがぶっとびすぎていて、正直話を聞くくらいしかできなかったのだが、

この風俗嬢のもやもやとした悩みの本質とはいったいなんだったのか、行動経済学の観点から説明できるじゃないかと思い、かつその悩みの正体は僕たち一般人にも知っておくべき大事なことなんじゃないかと感じた。

 

■社会規範と市場規範の世界

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行動経済学者であるダン・アリエリー曰く、僕たちは二つの異なる世界に同時に生きている。

「社会規範」が優勢なほのぼのとした世界と「市場規範」に支配された世界だ。

(聞きなれない言葉でわかりにくいかもしれませんが、この記事の肝となる部分なので、読み飛ばさないでいただけたら嬉しいです!)

一つ目の世界、「社会規範」には、友人同士の頼み事が含まれる。

旅行に行くから愛犬を預かってくれない?書くものがないからボールペンを貸してくれない?といったように。

社会規範は、僕たちの共同体の必要性と切っても切れない関係にある。たいてい穏やかでのほほんとしている。
電車でお年寄りに席を譲るといった、相手のためにする行為のようなものだ。どちらもいい気分をなり、すぐにお返しをする必要がない。

 

一方で二つ目の世界、「市場規範」に支配された世界では、まったく雰囲気が違う。

のほほんとしたものは何もない。賃金、価格、賃貸料、借金など、やりとりは非常にシビアだ。
このような市場の関わり合いが必ずしも悪いというわけではなく、対等な利益や迅速な支払いという意味合いもある。

市場規範の世界では、支払った分に見合うものが手に入る。そういう世界だ。

(2つの世界の説明、ご理解いただけましたでしょうか…!)

社会規範と市場規範を別々に隔てておけば、人生はかなり順調にいく。
しかし、この二つの規範が衝突するとたちまち問題が起こってしまう。

 

■社会規範を市場規範に切替えてしまうと恐ろしいことが…

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例えば、こういうことだ。面白い例があるので引用する。

あるイスラエルの託児所は、子どもの迎えに遅れてくる親に何度注意しても時間通り来ないので、遅れてくる親に罰金を科すことにした。

そうしたらなんと遅刻してくる親が多発したという。罰金を払っているのだから、その分長く子どもを預かってくれよというのが親の言い分だった。

これはまさに社会規範を市場規範に切替えてしまった例である。

罰金が導入される以前、先生と親は社会的な取り決めのもと、遅刻に社会規範をあてはめていた。

そのため、親たちはときどき時間に遅れると後ろめたい気持ちになり、その罪悪感から今後は時間どおりに迎えにこようという気になった。


ところが、罰金を科したことで、遅刻した分をお金で支払うことになると、親たちは状況を市場規範で捉えるようになった。

つまり、「罰金を払ってるのだから遅刻してもいいだろう」と、親たちは迎えの時間に遅れるようになったのである。

市場規範が託児所に入り込んで、社会規範が押し出されてしまったのである。

と、ここまでは心理学の本などに載っている有名な話なので知っている人もいるかもしれないが、この話は本当はここから始まる。

最も興味深いのは、数週間後に託児所が罰金制度を廃止してどうなったかである。

託児所は社会規範に戻った。では、親たちは社会規範に再び戻り、遅刻に対する罪悪感は復活しただろうか。

答えは否である。
罰金制度はなくなったのに、親たちの行動は変わらず、迎えの時間に遅れ続けた。むしろ、罰金がなくなってから、子どもの迎えに遅刻する回数がわずかに増えてしまったくらいだ。

社会規範が市場規範と衝突すると、社会規範が長いあいだどこかへ消えてしまう。一度崩れた社会的な人間関係はそう簡単に修復できない。

社会規範は一度でも市場規範に負けると、まず戻ってこないのだ。

 

■風俗嬢の悩みの正体とは

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自分のこと以上に相手のことを考えることが愛であると聞く。相手のことを考えるのは無償(の愛)だが、

「お金じゃ愛は買えない」とはよく言ったもので、お金を出した瞬間、社会規範が市場規範とぶつかり、愛は消しとんでしまうのである。

これは何も風俗嬢に限った話ではない。
もし、この記事を読んだ人は、彼女にプレゼントをあげるとき決して値段を口にしない方がいい。

「愛のあるプレゼント」が、「××円のプレゼント」へと変わり、二人の関係は市場規範の領域へ移ってしまう可能性があるからだ。

振られた腹いせに「お前にいくら使ったと思ってるんだ」なんて捨てセリフで言った暁には、永遠の別れが待っている。


僕たちは異なる二つの世界に生きている。
一方は社会的交換の特徴を持ち、もう一方は市場的交換の特徴を持つ。

これからも僕たちはこの二種類の人間関係にそれぞれ違った規範を当てはめながら生きていく。


もやもやしたものが、やっと輪郭をはっきりとさせて現れてきた気がする。

風俗嬢があのとき抱えていた悩みの正体は、「社会規範の世界」に「市場規範の世界」が紛れ込みそうになっていたからなのだろうなとやっと理解することができた。

本来なら愛情に満ちているセックスが、売り買いされるセックスと混同し、衝突しかかってしまっていたのである。

さて、悩みの本質がわかりこれでやっと風俗嬢の友達の悩み相談に乗れる土俵に立てた気がする。
ただだからと言って、悩みの解決策は相変わらずわからない。

「彼氏とセックスするのにお金を取ったらだめだよ」なんて言ったとしても、「そんなの当たり前じゃん」と一蹴されるだけだ。
この社会規範と市場規範の話をしても「ふぅん。なんだか難しくてよくわかんない」くらいにしか言われないかもしれない。

この悩みが解決されるまで僕はブログをやめられない。

今日も「思考を整頓」し、"もやもやしたもの"に輪郭をあたえていく。

 

 

実話です。
チャラ男が散々女遊びした末一周回って真面目になる、の"一周回った"の正体を掴みました。
カギは快楽と充足感。

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