思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

18禁コーナーに入りたくなる心理を考察したら、ある一つのことがわかった

■屋上から飛び降りようとした女子大生

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あれは確か、僕が大学2年生だった頃の話。年の暮れに、慶應の協生館という建物の屋上から、泣きながら飛び降りようとした女子大生がいた。

いじめられていたわけではない。慶應の授業についていけなくなったわけでもない。理由を聞いてみたが、なんてことはない。ただの失恋である。

付き合っていた彼氏に別れ話を切り出され、「別れるなら、ここから飛び降りる」と言って、自殺しようとしたのである。その女の子は、女友達はおろか他の男子とは友達になろうとすらせず、彼氏しか見ていなかったそうだ。

当時、この話を聞いて「若いな」と正直一笑に付しただけであったが、今となって思えば、この話に他人事ならない人間の心理が詰まっている気がしてならない。


■試験前に、勉強以外のことがしたくなる理由

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こんな話がある。

フロリダ州のある町で、環境保全のために、リン酸を含む洗濯洗剤やクリーニング洗剤の使用と所有を禁じる条例が制定された。

この条例に対する反応は、もはや手に入らないものを手に入れたいという傾向に拍車がかけられ、この町の大部分は、以前にも増してリン酸洗剤を良い製品だと見なすようになったのであった。

この条例が適用されていない隣町と比べて、この町の市民はリン酸の洗剤を穏やかで、冷水でも汚れがよく落ち、白さが戻り、しみ抜き効果が強いと評定したほどであった。

 

何かを所有する自由が制限されたり、ある品物が手に入りにくくなると、私たちはそれをより欲するようになるのである。

身近な例で言うと、試験前に勉強以外のことをしたくなる理由がこれにあたる。

試験直前になり、勉強をしようと思っていたにも関わらず、気付いたら今までまったくやるつもりがなかった部屋の掃除に没頭していた、または今まで読まないで何ヶ月も放置していたはずの本に夢中になっていた、という経験はないだろうか。

「試験勉強をしなければならない」という確立された自由を失った反動で、試験勉強以外の行為が急に輝き始めるのである。

中学生や高校生の思春期による反抗期もそうだ。

親に禁止された、夜の外出、オール、友達との外泊。今となって見れば何でもないはずのことが、当時の自由を制限された思春期の子どもからしたらどれもかけがえのない行為となったのである。

自由な選択が制限されたり脅かされたりすると、自由を回復しようとする欲求によって、その自由を以前より欲するようになる。

それゆえ、希少性が増して、ある対象にこれまでのように接することができなくなると、以前よりもその対象を望んだり所有しようとすることで、妨害に反発するのである。


■冴えない男子が、なぜ女子に振られるのか

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『LOVE理論』という本をご存知だろうか。これは『夢をかなえるゾウ』で一躍有名となった水野敬也氏が恋愛マニュアル本200冊以上読破し、より実践的な内容を書いた、業界では有名な幻の恋愛バイブルだ。

様々な独自の恋愛理論が紹介されているのだが、そのうちの一つに「執着の分散理論」がある。この理論を簡単に言うと、「同時に何人もの女を口説け」ということである。


「冴えない男子が、なぜ女子に振られるのか」

著者によれば、ほとんどの男に共通する振られる理由は「余裕がなかった」からだそうだ。

 

お前にもこういう経験があるだろう。好きでもないどうでもいい女の前ではいつもの自分でいられるし、そういう女からはホレられたりする。しかし、好きな女の前に出るとどうしても緊張して余裕がなくなる。

だから会話がぎこちなくなる。女はそういうお前を見て気持ち悪いと思うのだ。

しかしお前は余裕を取り戻すことができない。むしろ好きになればなるほどテンパって、どうしようもなくなって、そうした状況に耐えられなくなったお前は玉砕覚悟で告白する。こんな告白がうまくいくわけがない。こうしてお前は「好きになった女に限って」フラれていくのである。

 

好きな女性の前で緊張してしまう理由は、「たった一人の女性に惚れ、その女性しか口説いていないから」である。同時に複数の女性を口説くことによって、好きな女性の前でもテンパらずに常に余裕を保つことができると、著者は力説している。


何年か前のクリスマス直前に、サークルの後輩の大学2年生の女の子に恋愛相談をされた。同じサークル内に好きな男子がいる。でも、恋愛に奥手で緊張して話せないし、向こうも自分のことをどう思っているのかまったくわからないから、どうしたらいいかわからないと言われた。

そこでこの「執着の分散理論」をアドバイスしてみたら、「え、それチャラくないですかー」とすぐに一蹴されてしまい、困惑した。(確かにチャラい)

しかし、今なら意中の相手に対してこう言えと、アドバイスするだろう。


「私、同じ大学のイケメンの先輩から口説かれてて…


数少ない資源を求めて競争をしているという感覚は、人々にとって強力に動機づける性質を持っている。ライバルが現れた瞬間、冷えた恋心にも情熱が渦巻くようになったりするのである。


■思春期の18禁コーナーへの憧れ

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この心理を利用したセールスが「数量限定」「期間限定」である。


よくアメ横の商店街で「15分限定売り尽くしセール」と声高々に叫んでいる店員さんがいる。15分限定なんてことは真っ赤な嘘で、本当は一日中やっているし、毎日のように営業している。

しかし、「15分限定」という言葉に乗せられて、気付けば欲しくなかったような物まで買ってしまっているのである。

人々は、機会を失いかけると、その機会をより価値のあるものとみなしてしまうからだ。


冒頭に書いた彼氏に振られ屋上から飛び降りようとした女子大生もおそらくそういう心理が働いていたのだろう。

他の男友達はおろか、女友達も作らず大学では彼氏とばかりいた。彼氏がいなくなると、この世界にぽつりと一人取り残されてしまう。
そのため彼氏への価値が異常に高まり、どうしても別れたくなくなってしまったのだろう。


ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」の笑ってはいけないシリーズもそうだ。
お笑い番組なのに、「笑う」という日常的な生理現象を禁止することによって、より一層笑いたくなってしまう。今なお視聴者から愛され続ける所以はそこにあるのではないだろうか。


中学生の思春期だった頃、あれほどまでに「18禁コーナー」に対して興味を抱いたのは、そういうことだったのかと、今になってやっと理解することができた。

〝見る〟という自由を奪われたことに対しての抗い。



Hな雑誌の袋とじを開けたくなるという行為は、純粋な人間的心理であり、何の恥ずべき行為ではないのだ!

 

 

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