思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

20歳の渋谷系ギャルが教えてくれた大切なこと

10年くらい前だっただろうか、何気なくニュースを見ていたら、喋りのプロフェッショナルである某キー局のアナウンサーが信じられない言い間違いをしていた。

大リーグのレッドソックスのことを〝レッドセックス〟と言ってしまったのである。

当時ちょうど思春期真っ盛りだった中学生は「アナウンサーがテレビでセックスって言っちゃたよー」と学校ですぐにこの話題をネタにし、盛り上がっていた。

その時、高嶺の花の象徴であるアナウンサーは住む世界が違い、どこか遠い人だと思っていたのだが、なぜだがミスをしたことでどこか親近感を感じた。


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学生の頃、芸能事務所のスカウトマンのアルバイトをやっていた。

スカウトを始めたばかりのあるすごく寒い日、派手な顔だが、おめめぱっちりでとても綺麗な顔をした渋谷系ギャルが、ハチ公前で誰かと待ち合わせをしていた。

この人は「ぜひうちの芸能事務所へ!」と思い、話しかけた。


「芸能事務所、興味ないですか?」
「どこかすでに事務所入られたりしています?」
「今日はどこかお出かけですか?」

スカウトをやっていたらよくあることなのだが、僕の存在がまるで見えていないかの如く、まるで微動だにせず、言ったことは全て無視され続けた。

「このあま何無視してんねん……」

あ、言葉が悪かったですね、いや、もう、たいへんなお姉さんで。

全然僕の話を聞いてくれない。しかも、あまりの寒さにろれつが回らなくなり、思わず言葉を噛んでしまったのである。

話は聞いてもらえないわ、言葉を噛んでカッコ悪いところを見せてしまい、もうさすがにダメだと思った。


渋谷系ギャルに対して、万事休す。八方塞がり、万策尽きたかと思われた、その時である。

先ほどあんなに断固として話は聞くまいという様子だったギャルは、くすりと笑い出したのだ。

しかも、向こうから「寒い日なのに、本当にお疲れ様です。風邪には気を付けてくださいね」と優しく声をかけてくれたのであった。

その後、親切な言葉をかけてくれただけでなく、僕の話も聞いてくれて連絡先を教えてもらい、後日事務所に来てもらえることになったのである。


1週間後、事務所の説明会に来てくれたギャルのKさんに、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

「最初、あんなに話を聞いてくれなかったのに、急にどうして僕と話をしてくれたのですか?」

すると一言だけこう言った。

「噛んだからですよ」

噛んだから?
正直、この時は何を言っているのかわからなかった。無視していたかと思ったら急に話してくれたり、噛んだから話してくれたとか言うしで、情緒不安定な気まぐれなお姉さんなのかと思った。ギャルとコミュニケーション取るのってやっぱり難しいなぁと。

しかし、これはどういう意味だったのかたまたま心理学を勉強して後になって知ることができた。

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心理学用語で「アンダードック効果」、またの名を「負け犬効果」と呼ばれるものがある。

不利な状況にあるものに手を差し伸べたくなる人間の心理の表れだ。

この心理によると、相手から善意を引き出すためには、まず自分の弱さや失敗談を曝け出した方がいいということらしい。


今まで僕は人と話をするとき、自分を良く見せようとしたり強く見せようと、ついつい肩書きや自慢話をしてしまっていた。自己顕示というやつだ。

だって同世代なのに自分よりすごい経歴を持った人なんて山ほどいたから。

学生団体〇〇代表
メンズノンノ専属モデル
電通インターン△△期生
起業
世界一周経験者

当時ちょうどTwitterがはやっていて、そんなすごそうなヤツらの情報が地方から出てきたばかりの田舎者の僕の目にいくらでも飛び込んできた。

浪人もしてるし、もっと頑張んないとって。強がって、強がって、空回りして。

ミーハーで強がりの僕は、すごそうなヤツら〟の仲間入りがしたくて、同じようにTwitterのプロフィール欄に無いに等しい肩書きをあたかもすごいかのように並べ立てていた。それで嫌なやつだと思われたこともあったかもしれない。

そんな時に一人の女の子にこんなこと言われたもんだから、すぐには受け止められなかったけれど、数年の時を経てやっと理解することができた。徐々に肩の力も抜けるようになってきた。なんだ素の自分でいいのかもしれないんだって。

 

レッドソックス〟のことを〝レッドセックス〟と言い間違えてしまったアナウンサーに、完璧でどこか近づき難いイメージから親近感がわいたように、シカトし続けた渋谷系ギャルが僕が噛んでから急に話を聞いてくれるようになったみたいに、

自慢話ではなく、相手より先に弱みを見せ、自己開示することで、相手に心を開いてもらえるんだなぁと学んだ。 

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この女性とはもう二度と会うことはないだろう。連絡先も知らない。
しかし、人と対話する上ですごく大切なことに気づかせてくれたギャルのKさんに今更ながらありがとうと言いたい。

そしてできることならあの頃の自分に、東京に出てきたばかりの20歳だった頃の自分に言ってやりたい。


強がんなくていいんだ、と。


だからこれから人と話す時は〝ソックス〟を〝セックス〟と噛んでいこう!(それは違う)

今ではこんな冗談も言えるようになったんだ!強がる必要なんてないんだぞって。

失敗談はかっこ悪いとは思わずに、これからは勇気を持ってどんどん自分の弱みを話していこうと思う。

あの頃の強がっていた自分より、きっと少しだけ前に進める気がする。

 

 

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