14歳だった頃の僕はどこか少し冷めていて、ずっと手応えの無さのようなものを感じていた。
早く大人になりたかったのに、周りと一緒になって14歳らしいことをし、笑い、はしゃぐ。それに気づいて苛立ち、不安になる。
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中学生の頃、野球部でフレッシュマン大会というものがあった。試合に出れるのは1年生だけ。
「この大会で優勝できなかったら、全員坊主な」という監督のきまぐれの一言で、決勝戦で負けてしまった僕たちは生まれて初めて坊主をすることになった。
それから1週間後、床屋で「坊主にしてください」とお願いすると「長さは?」と言われた。
結論から言うと、1㎝でいいところを、言い間違えて1㎜と言ってしまった。
家に帰って「髪、短くない?」と母親の一言がぐさりと突き刺さる。
髪の毛が1㎜になった頭がまぁ青いこと。
何を1000円カットの床屋のサービスで、散髪終わりにハイチュウをもらって喜んでいるんだと、自分に苛立つ。
周りの友達の髪が伸びきる頃に、まだ髪が伸びきっておらず、一人だけ取り残されて不安になった。
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野球部の試合終わりに初めて行った1000円の焼き肉食べ放題でもそうだ。
26歳の僕が、焼き肉に行って食べる量の3倍は食べたと思う。「1000円の元を取らねば!」と歩けなくなるくらい食べた。
帰りの夜道、14歳はこんな食べなきゃ良かったと自分に苛立つ。
ただ当時はそれが全てだったのも確かで、初体験の連続と膨大な時間だけが14歳を覆っていた。
食べ放題で無茶しなくなるまでには
1000円の価値が変わるまでには
果てしない時間が14歳には必要だった
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それから少しして「トライヤルウィーク」がやってきた。
1週間の職業体験だ。おのおのいろんな職場へ行き、職業体験をする。
14歳は保育園へ行った。
14歳が子どもたちのお世話をした。
一緒に遊び、遊び、遊び、たまに悪さをする子どもを叱り、また遊び、寝かしつける。この繰り返し。
いつまで続くかわからないこの繰り返しが14歳を不安にさせた。
子どもと大人の狭間にいる「時間」の門番のようなヤツが、14歳の前に現れては消え、現れては消える。
いつになったら大人になれるんだろう
㎜と㎝の単位を間違えなくなったら?
ハイチュウをもらっても喜ばなくなったら?
焼き肉食べ放題で無茶しなくなったら?
大人になりたい 大人 大人 大人
狭い井の中で声を張り上げる
オトナってなに?
オトナ
おとな
大人
大と人?
自分の人生の半分も生きていない子どもたちに囲まれ、自分だけ遊具の大きさと不釣り合いの体を小さく丸めながら、幼稚園にある滑り台の上から空を見上げると、
そこにはとてつもない世界が、茫漠とした時間が広がっていた。
こちらも子ども論。高3まで美容師になろうとしていて、美容院にはすごく思い入れがあります。
子どもの頃、よく「あぁ、もう僕の人生終わった…」と思う瞬間がたびたびありました。
その正体がなんだったのか、今になってやっとわかったので書きました。
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未来を担う14歳に瀧本さんが「ミライの授業」として書いて珠玉の一冊。瀧本さんの著書はどれも面白いが、その中でも良書だと思います。オススメ。
『14歳』読んでからいつか14歳について書きたくて、「14才」聞きながらやっと書けました。満足。