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思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

4月1日生まれの就活生が、エイプリルフールの影で苦しみながらも無事に内定した話

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「なんで私ってこんなに自己肯定感が低いんだろう。自分に自信が無さすぎて……」

各企業がサマーインターンを始める大学3年の夏、就活生の友達にこんな相談をされた。

彼女が志望している会社は、就活用語で「自己分析」と呼ばれるものが内定するためには必須で、面接ではひたすら「なんで?なんで?なんで?」と聞かれる。そのため原体験となる幼少期のエピソードを話さなければならない。

(人格が形成されるのは幼少期なので、大学時代に何をやっていたかも大事だが、面接官は幼少期の話を聞いてその人の人となりを知りたいのだ)

「ねぇ、聞いて聞いて!やっとわかったかもしれないの、自分に自信がない理由!」

彼女は、数ヵ月悩んだ末、なんとか答えらしきものに辿り着いたみたいだった。

自己分析がうまくできずここ最近かなり悩んでいたので、どうして?と優しく聞くと、こう言われた。

「4月1日生まれだからかもしれない」

僕は始め何を言っているのかわからなかった。

4月生まれがどうした。俺も4月生まれだぜ?4月13日生まれだから、413(シイサー)で覚えてくれよな!

なんてことを言ったら、うるさいと言わんばかりにすぐに遮られ、彼女は続けた。

「親に誉めてもらえなかったの……」

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(『天才!』(マルコム・グラッドウェル)p.27)

上の画像を見ていただきたい。
日本ではなじみが薄いが、メディスン・ハット・タイガースというカナダのアイスホッケーの登録選手名簿である。

ここに今まで誰も気づかなかった、見逃してはならない箇所が一点ある。

それは、1月、2月、3月生まれの選手がとてつもなく多いということだ。カナダのアイスホッケーの選抜チームを調べると、全選手の40%が1~3月生まれ、30%が4~6月生まれ、20%が7~9月生まれ、10%が10~12月生まれだったのである。

なぜこのような偏りが見られるのか。
これはカナダでは同じ年齢の少年を集めてクラスを作る場合、年齢を区切る期日を「1月1日」に設定しているからだ。

つまり、ある少年は1月2日に10歳になり、別の少年はようやく同じ年の暮れに10歳になる。思春期前のこの年齢では、12ヶ月の差が身体の発達に大きな違いを生む。

世界でも特にアイスホッケー熱の高いカナダでは、9歳か10歳で代表チームを選び始める。成長する時間をより多く与えられた少年たちは、才能ありと見なされ選抜に選ばれる。

代表メンバーに選ばれると、よりよい指導が受けられ、より強いチームメイトに恵まれ、より多くの試合でプレーすることになる。

始めのうちは、生まれが少々早かっただけという少年の優位点は、13~14歳になる頃には、熱心な指導と人よりも多い練習量によって本当に優れた選手になっていくのである。

成功している人は、様々な素晴らしい機会を与えられる可能性が高く、さらに成功する。「成功するから成功する」である。つまり、大きく成功しようと思ったら、内部要因だけではなく「外部要因」が重要なのである。

本人の努力はもちろんだが、環境という外部要因に味方された運の良かった人は、後に、例えば羽生結弦のように、石川遼のように「天才」と崇められるようになる。天才は、本人の才能だけではなく、「才能を開花させるに至った経緯」も重要なのである。

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彼女が言いたいことはこういうことだった。

4月1日はエイプリルフールでもあるが、学年の最後の日だ。「小学校に入学するタイミングは6歳になって最初の4月1日を迎える時」で決まる。

つまり4月1日に生まれるか、4月2日に生まれるか。たった1日しか違わないのに、学年は1学年違ってくるのである。

4月1日生まれは、その学年で最後の日に生まれたことになる。ある程度年齢がいけばいつ生まれたかなんて関係ないが、子どもの頃の1年はかなり大きい。

そのため、4月1日生まれだった彼女は幼少時代、周りのみんなができているのに自分だけできていなかったことが多かったそうだ。周りと比べられ、母親から怒られることはあっても、誉められることはほとんどなかったという。

「誉められなくて、気づいたら自分に自信が無くなっていって。その名残か今でも自己肯定感がすごく低いのかもしれないの……!」

ある程度筋の通った自己分析に自分で自分に納得し、就活本を片手に幼少時代に苦労した話を、目を輝かせながら僕に聞かせてくれた。

そのミスマッチがどこかおかしくて、そして少し歯痒かった。

嘘をついて盛り上がるエイプリルフールという晴れやかな日の影で、苦しんでいる子どもがいるなんて想像もしたことがなかったからだ。

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「自分に自信がない理由はわかったけど、どうしたら自信つくのよー!」

リクルートスーツ姿の学生が増えてくる大学3年の10月、大学のゼミ終わりにレジュメを鞄にしまい帰ろうとする僕を引き留め、いきなりそんなことを彼女は言うもんだから、

「一つずつ小さな成功体験を、積み上げていくしかないんじゃないかな」

とちょっぴり上からアドバイスしてしまった。

僕は人に助言できる立場になんてないんだけれども、それでも少しでも何かの足しになればと、気付いたらひたむきに頑張る彼女の姿に心を打たれ、応援したくなってしまっていた。

4月1日生まれの彼女は、先ほど例に挙げたアイスホッケーの選手のような外部要因という「才能」には決して恵まれてはいなかった。それに加え、体育会のテニス部で、夏の引退まで忙しく自分の将来について深く考えてこなかった。

しかし、それでも最後の終了のベルが鳴るまで泥臭く食らいついていっていた。

インターンの面接や早期選考の面接に落ち続けながらも、周りの先輩や人事の方に対し「来週まで言われたところを修正してくるのでまた見てください!」と次から次へとお願いしていった。採用人数がかなり少なく、OBのいない会社には、会社の前で社員さんらしき人を出待ちし、「OB訪問させてください!」とお願いしていた。

もちろん何度もお世話になった先輩には、地元名産の折り菓子を渡したりと、相手への最大限の感謝や気遣いを忘れてはいなかった。

すると、企業の人事や先輩は、嫌な顔ひとつせずに「〇〇ちゃんがそんなに努力しているなら、全面的に協力するよ」と言った。途中から「志望動機もっと固まってきたら、模擬面接してあげるから、またいつでも連絡しておいで」とちょくちょく言われるようになった。

少しずつ彼女を応援してくれる人が増えていっていたのである。「本気」が人を動かし、ひたむきに頑張る姿が応援したいと思わされるのだ。

仮に、就職活動がうまくいかなかったとしても、自分を応援してくれる人達がいる限り、彼女は幸せなんだろうなぁとそのとき強く感じた。
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きっと彼女は気づいてはいないだろうけど、相談に乗ったりアドバイスをしながら、学ばせてもらっていたのはおそらく僕の方だったのかもしれない。

正直に言うと、始め彼女の行動を傍目に見ながら、どこか少しかっこ悪いと思っていた。俺ならもっとスマートに、もっとスタイリッシュにやれると。

「何がOB訪問だ、何が出待ちだ、しゃらくさい」
「そもそもなんでわざわざ面接を受けにいかなければならないんだ。採用したかったら人事が俺のところに来いよ」

就職活動は周りを蹴落としてでも大企業に内定すべき。一流企業に内定できれば勝ち、できなかったら負け。判断基準は勝ち負け。変に勝ち負けにこだわり、悪い意味でスマートに生きようと斜に構えていた。いかに汗をかかずに勝てるか、いかに失敗せず成功するかばかり考えていた。しょうもないプライドばかりが先行し、結局は負ける(面接に落ちる)のが怖くて行動できなかっただけだった。

それは僕の「弱さ」であり「甘え」でもあった。

ひたむきさや本気が人を変え、自分を応援してくれる人を増やしていく。そういう人が外部要因という名の才能を手に入れ、成功していく。

彼女と話をしていて今後生きていく上で大切なことを教わった気がした。

「自分のことを自分以上に考えてくれる人がどれだけいるのか」ということを。そして、それぞれの「自分の弱さ」への立ち向かい方を、どこがホワイト企業でどこがブラック企業かなんてより知っておくべきなんだろうなぁと就活をしながら彼女から学んだ。
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黒いスーツに身を纏った彼女は僕に一つ、小さな嘘をついた。

「自分に自信がなく、私は何もできないとても弱い人間で、社会に出たらやっていけないかもしれない」と。

そんなことを言われた三ヶ月後の4年生の春。
第一志望の会社にこそ落ちてしまったが、幼い頃に背負ったハンデに正々堂々と立ち向かい、彼女は無事に納得する形で就職活動を終えることができた。

ボロボロになるまで着たリクルートスーツはタンスの奥にしまわれ、あのとき読んだ就活本はもうどこにいったかわからない。

しかし、自分の弱さや短所から逃げることなくしっかりと向き合うことのできる彼女は、社会に出てもきっと活躍するんだろうなぁと僕は強く思う。

 

 

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