思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

なぜ正義の味方は、みんな〝イケメン〟なのか?

佐藤健瀬戸康史福士蒼汰菅田将暉飯島寛騎

この羅列を見て、ピンときた人はなかなかの重症だ。

共通点は、もちろん「イケメン」。そして、仮面ライダーの主人公を演じたことがある俳優である。

仮面ライダーは、子ども向けであるにも関わらず、子どもと一緒に見ていたお母さんが甘いマスクのイケメン主人公にはまってしまい、今では奥様人気もすごい。

それを聞き、正義の味方は皆〝イケメン〟であることに対して、少し疑念を抱くようになった。


■イケメンが得をする「ハロー効果」

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小学生の頃、「足が早い」というだけでモテたように、美男美女の周りには自然と人が集まってきて、人気者になったりする。

ある人が望ましい特徴を持っていることによって、その人に対する他者の見方が大きく影響を受けることを、心理学の専門用語で「ハロー効果」と言う。

簡単に言うと、外見の良い人は、才能、親切心、誠実さ、知性といった望ましい特徴をもっていると、自動的に思われる傾向があるそうだ。

こんな恐ろしい研究結果がある。

刑事裁判が開始されるときに、 74人の男性被告の身体的魅力を評定しておいた。そして、後で研究者がこれらの裁判の判決記録を調べたところ、ハンサムな男性の方がずっと軽い判決を言い渡されていることがわかった。実際、魅力的な被告で刑務所に入れられたのは、魅力的でない被告の半数しかいなかったのである。

 人は本能的に「美しい」ものに惹かれる性質がある。見た目が美しい人は、他の要素も良いと思われがちで、それだけで人から好意を抱かれるのである。

 

イケメンではない方、朗報です。

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残念ながらイケメンに生まれなかった方、安心してほしい。魅力的な容姿と同じくらい、人から好意を抱いてもらう方法がある。

社会心理学的に人から好意を持たれる理由は4つある。

「身体的魅力」「近接性」「類似性」「好意」の 4つである。

1つ目の「身体的魅力」は上記で挙げた通り。

2つ目の「近接性」は、簡単に言うと、人は何度も会えばその人に好意を抱き始めるということ。

例えば、同じクラスにすごいチャラ男で嫌いな男がいるとする。その男と特に交流があったわけではないのに、学期終わりには、その男に対しての嫌いな感情が薄れていたという経験はないだろうか。これは近接性ゆえ。

そして、3つ目の「類似性」と4つ目の「好意」がここで取り上げたい重要なポイントだ。

僕たちは自分に似ている人を好む。この事実は、意見や性格、経歴、ライフスタイルなど、どのような領域の類似性においても当てはまるそうだ。

初対面の相手と共通の友達がいたら、心の距離感がぐっと縮まって、すぐに打ち解けられたという経験をしたことがある人もいると思う。それが「類似性の効果」である。

僕は、学生時代、渋谷にある芸能事務所のスカウトマンをやっていて、いろんな人に声をかけていたのだが、この「類似性の効果」が本当に使えるかどうか実験をしてみたことがあった。

話しかけた相手に対して、出身を聞いてみたら、僕と同じ兵庫県出身です」と言われた。そこで、すかさず「僕も兵庫出身なんですよ!」と言ったらその瞬間、「あ、ほんまに?」と相手は僕に対して「敬語からタメ口」に切り替わったのである。

その後も話が盛り上がり、さっきまであんなに敬語でよそよそしかったにも関わらず、「類似性の効果」によってすぐに仲良くなることができたのであった。

それくらい「兵庫出身の上京組」という類似性によって、僕とその相手の心の距離を縮めることができたのである。

 

しかし、この事例はたまたまかもしれない。再現性を持たないと実証したうちには入らないので、就活生だった頃、就職活動の場でも「類似性の効果」の検証してみることにした。

某企業の就職活動の説明会は、学生がその場にいる社員さんと名刺交換やOB訪問することを禁じられている。理由は、一人に対応したら全員に対応しなければならなくなり、収拾がつかなくなるからだ。

就活生だった当時、説明会は社員さんとコネを作るために行っていたので、この禁止された名刺交換をなんとかくぐり抜けられないだろうかと考えた。そこで僕はある仮説を立てることにした。

説明会が終わった後、社員さんに話しかけた際、共通の話題を振り「類似性の効果」によって距離を縮め、「人事と就活生」という関係を「先輩と後輩」という関係に切り替えることができたなら、OB訪問に応じてくれるのではないだろうかと仮説を立てた。

というのも、もし自分のサークルの後輩がやってきて「また今度、お茶でも飲みながらお話を聞かせてください!」と言われたら断れないと思うからだ。

仮説を立てたら、あとは検証あるのみ。

まず1人目。とても人当りの良さそうな男性の人事Oさんに、説明会終わり「類似性の効果」を使わずに普通に話しかけてみた。

「説明会ありがとうございました。大変参考になり勉強になったのですが、もっと詳しく会社のことを知りたいので、後ほどOB訪問させていただけないでしょうか?」

結果は、もちろんNOだった。

連絡先すら教えてもらえず、「禁止されているので、説明会でではなく、自力でここまで辿り着いてください」と言われてしまった。

しかし、ここまでは想定内。

そして、2人目。ちょっと怖そうな女性人事の Rさんに今度は「類似性の効果」を使い、話しかけてみた。

共通の知り合いの人事や営業の方たちの話を出し、さらに仲が良いアピールをし、最後に「Rさんのお話も聞いてみたいので、ぜひ今度OB訪問させてください!」と。

結果は、かなりうまくいった。

名刺を切らしていたので、わざわざ紙に電話番号とメールアドレスを書いてくださり、教えてくれたのであった。

おそらく僕の仮説は正しかった。

「類似性の効果」によって距離が縮まり、「人事と就活生」という関係を「先輩と後輩」という関係に切り替えることができたのである。それくらい「類似性」は人との距離を縮め、好意を抱いてもらうために必須なのだ。


■すぐに好きと言うべき理由

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最後、4つ目の「好意」について。僕たちは、相手から好意を伝えられると自動的に望ましい反応をしてしまう。

世界で最も偉大な自動車セールスマン、ジョー・ジラードは、自分の成功の秘密はお客さんが自分を好きになるようにしたことだ、と述べている。彼はその目的のために、一見すると馬鹿らしくコストが大きいと思われることをやってのけた。毎月、一万三千人以上のお得意さんの一人ひとりに、メッセージを印刷した挨拶状を送ったのであった。挨拶状の種類は毎月異なっていたが (新年、バレンタインデー、感謝祭など )、それに印刷されたメッセージは常に同じだった。「あなたが好きです」と書かれていたのである。

人は他者から好きだと言われると好きになってしまう生き物なのである。(※恋愛だけは例外で、好きと伝えても好きになってもらえない)

 

個人的な話になるが、通称「ほっこり会」という定期的に集まる 同じゼミだった5人グループがある。

大学3年のときのゼミ合宿で、夜中に深夜のテンションで、「お互いの良いところを 1人ずつ誉めていこうぜ」という謎の褒め合いが始まった。

「○○ちゃんの周りを俯瞰して見れるのは素晴らしい」
「△△くんの引きの強さは目を見張るものがあるね」
「◆◆ちゃんを初めて見たときから可愛いと思っていた」

など最初はみんな照れていたものの、途中から真剣にお互いの良いところを誉めていった。普段言えないお互いの良いところを誉め合う「ほっこり会」は想像以上に盛り上がり、終わるまでに数時間以上経っていた。

5人で誉め合っていたのだが、正直、仲が良い人ばかりではなかった。そこまで話したことがなかった人から、そんなに好きではなかった人まで。

しかし、この「ほっこり会」が終わる頃には、あろうことか僕は全員のことを好きになっていたのであった。

「この人、俺のことをこんな風に良く思ってくれていたんだ」
「あの子は、こんなところを良いと言ってくれた」

好意を抱いていなかった相手から好意を寄せられて、気付けばその人に対して好意を持つようになってしまっていたである。

それくらい、好意を伝えると相手は自分のことを好きになってくれるものなのだ。

初対面の相手とすぐに打ち解けたかったら、「好意を伝えて、類似性アピール」をしてみるべきだ。声を大にしては言えないが、これが恐ろしく効くのだ。


■〝イケメン〟ではない正義の味方

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古田新太大泉洋阿部サダヲ森山未来ムロツヨシ

仮面ライダーのその後の話として、こちらの俳優を使って描いてみてはどうだろうか。

そして、俳優としてはもちろん一流だが3枚目と言われる俳優が、お互いを誉め合うというのはどうだろう。

「あの悪役に対しての、あの蹴り最高だったねぇ」
「絶対負けると思ったのに、ちゃんと倒しちゃうあたり、さすがだよねぇー」

高視聴率は期待できないものの、少なくとも一定層からは共感してもらえるはずだ。

ハロー効果がどうとか、類似性や好意がどうだとか、散々いろいろなことを言ってきたが、結論はやはりこれに尽きる。

 

 

あぁ、イケメンに生まれたかった。

 

 

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