思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

「たこ焼きにマヨネーズをかけない」という名のスローガン

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特定の人たちだけの共通の約束事というものは絆を強くする。

 

少し前の話になるが、姉が結婚した。

大阪に親戚一同が集まり、華やかな結婚式が行われた。

式が終わり、千葉に住んでいる従兄弟がせっかく大阪にまできたのだからと、たこ焼きを食べたいと言い出した。

そこで食べログで☆が高いところを探し、僕と従兄弟家族の5人でたこ焼きを食べに行くこととなった。

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ここである衝撃的な事実を僕は知ることとなる。

それは、

 

従兄弟は全員「たこ焼きにマヨネーズをかけなかった」のである。

 

家族のうち一人や二人だけかけないのなら、マヨネーズが嫌いなんだなとか、カロリー高いから控えてるのかな、と思うが、

家族4人とも、たこ焼きにマヨネーズをかけなかったのである。

僕はたこ焼きにマヨネーズはマストでかけるので(むしろなかったら食べないくらい)、全員マヨネーズをかけないことを知ってかなり驚いていると、

「うちはマヨネーズかけないんだよ」と一言だけ、素知らぬ顔で言われた。

その後、僕だけマヨネーズをかけようとしたら、マヨネーズの赤いふたがとれて、ドバッとたこ焼きにマヨネーズがかかってしまった。

ああああ。

その瞬間、従兄弟たちと僕とは家族ではないんだなぁと思った。

 

従兄弟家にとって「たこ焼きにマヨネーズをかけないこと」は、今さら議論のしようもない当たり前すぎる共通認識のようなもので、

大袈裟に言うと、こんな風にあるコミュニティ内にのみ存在する規範のようなものは、その集団内の結束を強くし、一体感を生むのだろうなぁと、そのとき感じた。

 

それと同時に「あぁ、これってあのときのあれに似てるなぁ」と思った。


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それは、大学卒業間際に友達から

リクルートの人ってプライベートでもほんと〝なんでなんで〟って聞くよね」

と言われたときのことだ。

 

リクルートの面接はとにかく「なんでそれをしようと思ったの?」「なんでそう思うの?」と、とにかくなんでなんでなんでなんでなんでと聞かれる。(なので幼少期の頃まで遡って自己分析をする必要がある)

それはリクルートの面接では、行動に至った最も濃い原液のような「原体験」を大切にしているからであり、その人(就活生)のことをもっと深く知りたいという現れでもある。

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僕はリクルートリンクアンドモチベーションというリクルート出身の人が作った会社しか受けなかったので、他の会社の面接のことを知らないのだが、

他の会社だと幼少期の原体験の話まで深掘りされることは珍しいらしく、また、どうもなんで?と考える癖がついていない人も多いらしいのだ。

実際に今でも友達に「なんで?」と聞くと、「わかんない」「そんなこと考えたこともなかったわ」とよく言われる。

こっちはあなたのことが知りたいだけなのに、「わからん」とだけ言われて、しゅんとなる。
(教えてよ、ちゃんと考えて)

 

いずれにせよ、リクルートの面接を通じて、就活生は「なんで?」と深掘りして考える癖がついていくのだ。

これがリクルートの「暗黙の規範」のような気がしていて、

話を大きくすると、それらは会社のビジョンやミッション、スローガンのようなものとも言えるかもしれない。

 

最近わけあって、いろんな会社のビジョンやミッションを調べていたら、経営者の信念や魂の叫びみたいものが伝わってきて、しかもそれらはそれぞれ違っていてとても興味深かった。

うまくいっている会社は仮にそれらが対外的に明文化されてなかったとしても何かしら伝わってくるもので、その想いに惹かれて人が集まってきている気がした。

ミッションが浸透していると、チームメンバーが同じ方向に進んでいけるだけでなく、採用でも役に立つのだ。

そして、経営者がどんな旗を掲げるか、何を大切にしているかは、激しく揺さぶられた「原体験」からくる。

それっぽい言葉を並べても、原体験がエピソードとして語れない人の言葉は嘘だ。すぐにわかる。

 

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僕が最も偉大な企業の一つだと思っている「ピクサー」という会社がある。

トイ・ストーリー」や「ファインディング・ニモ」、最近だと「リメンバー・ミー」を作ったアニメーションスタジオだ。

1995年、世界初の長編フルCGアニメーション映画「トイ・ストーリー」を発表し、世界的な大ヒットとなり、今なお勢いは止まることを知らず、ヒット作を作り続けている。

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ピクサーはオフィスの入り口に、オスカー像と映画の原案となった手書きのスケッチ、そして「ボロボロになったウッディの人形」が飾られている。

ピクサーの元CCOのジョン・ラセターがこんなことを言っていた。

 

「このウッディは本当によく遊んでもらった。私たちがアニメーション映画を作り続ける理由はここにある。自分達が生み出した架空のキャラクターが映画を見た子どもたちの中で本物となり、映画を見たあとでもずっとそばにいたいと思ってもらえること。このことのために頑張るのです」

 

この話を聞いて、あぁピクサーすごいなぁさすがだなぁと思った。

このボロボロとなったウッディの人形は、映画のキャラクターが映画の世界から飛び出し、現実の世界でもお客さんの生活の一部になり、夢と希望を与えていることを示しているのだ!

 

成功しているチームは、どのチームも共通の価値観や目的がはっきりしていて、それを徹底している。

そして働く場所は、彼らの価値観や目的を象徴しているような人工物で溢れている。

どの人工物も目的は同じで「これは我々にとって一番大切なものだ」という明確なメッセージを伝えている。

ビジョンやミッションといった同じ言葉を何度も耳にするだけでなく、オフィスの装飾がシグナルの役割を果たすことで、チーム全体が確固とした目的意識を共有するようになるのである。

そして、それらががっちりはまることで、組織としての一体感を生むことにつながるのだ。

 

従兄弟がたこ焼きにマヨネーズをかけなかったことを見て、そんなことを考えていた。

 

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「名字」の話です。ブログをUPするとき、僕の中にいちおうのUPしてもいいボーダーラインみたいなものがありまして、この記事はボーダーラインギリギリの及第点っていう自己評価だったのですが、想像以上に反響があり驚きました。

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■オススメ書籍

 ピクサーの本ならこの2冊が最高です。今でも時々読み返しています。

 

ラセターさん、ありがとう [DVD]

ラセターさん、ありがとう [DVD]

  • 発売日: 2003/11/19
  • メディア: DVD
 

 本文のボロボロのウッディのエピソードは『ラセターさん、ありがとう』というDVDに出てきます。ジョン・ラセターは本を出していないので、彼のことを研究するならこの2枚のDVDが必須!!!です!!!!