思考の整頓

"もやもやしたもの"に輪郭をあたえる

「精神的にしんどいな」と思ったらまずすべきこと

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まずすべきことってなんだ?と思ってクリックしていただいた方のためにすぐに答えを言ってしまいますが、

 

それは、

「運動」

です。

 

運動ってすごくないですか?

なんだよ運動かよ、そんなことお前に言われなくても100万年前から知ってるわボケ

と思ったかもしれませんが、離脱せずにもうちょっとだけお時間をいただけますでしょうか。

 

ありがとうございます、あなたはとても優しい方だ。

 

 

僕が上京したばかりの大学1年の頃の話なのですが、

当時、お金が無くて、駅まで徒歩16分かかるやっすいアパートみたいなところに住んでたんですね。

アパートと言っても僕を入れて2人しか住んでないところで、周囲にも街灯があまりなくて、夜になるとやたら暗いんですよ。

 

ちょうど沖縄旅行から帰ってきたばかりのサークルの同期が遊びに来たときに、

「ここ沖縄みたい」

と(田舎の夜くらい暗いと)言われたことがあるくらいでして。

 

で、そのアパートの目の前に桜の木があるんですね。

これがまぁ見事なくらいに不気味でして、目黒川の夜桜とはほど遠いものでした。

 

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ある日の夜、僕はランニングをしようと家を出たら、その桜の木が目に入り、

「この木の下に死体が埋まってそうやし、めちゃくちゃ気味悪いな。えらいとこ引っ越してきてもうたわ……」

と思いながら走りに行ったんです。

その後、30分くらいランニングして戻ってきて、

再び、その夜桜を見たときにこう思いました。

 

「あれ、綺麗……!!!」

と。

走る前に見たときは間違いなく「不気味」と思っていたのに、走り終えて帰ってきたときは「綺麗」と思えたんです!!!!

同じ桜の木なのに、ですよ?

運動ってすごくないですか?!

 

これは、おそらく心理学用語で「投影」というメカニズムが働いていて、投影とは自分の心の状態を人やモノに映し出すことを言います。

例えば、自分の内面が幸せな時には、世界が輝いているように見えますし、一方で寂しい時には寂しく荒んでいるように映ります。

そういう意味で、現実に起きる出来事は、自分の内面を映し出した鏡なのです。

 

走り出す前はあまり調子が良くなく、おそらく桜の木に「不気味だ」とその時の気分を投影してしまっていました。

しかし、ランニングをすることで心臓から血液がさかんに送り出され、脳がベストな状態になったおかげで、走り終えた後、爽快な気分になれたのでしょう。

同じ桜の木を見ていても、「不気味・綺麗」と感じ方が違ったのはそういうことだったのです。

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さて、ここで問題です。

 

有名な研究なので知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、

うつ病患者を3つのグループに分けて比較しました。

1つ目のグループには抗うつ薬を処方し、

2つ目のグループにはエアロビクスをさせ、

3つ目のグループにはその両方を組み合わせました。

この3つのグループのうち、半年後、最もうつ病の再発率が低かったのはどのグループでしょう?

 

ちなみに4ヶ月後にはどのグループも改善を見せたのですが、半年後、あるグループだけはダントツで再発率が低かったんです。

 

 

問題もう一度言いますね。

問題:半年後、最もうつ病の再発率が低かったのはどれでしょう?

抗うつ薬
②運動
③運動と抗うつ薬

 

 

 

決まりましたか?

 

 

 

 

 

 

そろそろいいですかね?

 

 

 

 

 

 

 

決まったようなので、答えを言います。

 

 

3つのグループのうち、うつ病の再発率が最も低かったのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②の

運動のみ

です!

 

抗うつ薬のみの被験者の再発率は38%、

抗うつ薬と運動の治療を受けたグループは31%、

運動のみを行ったグループは、たったの9%しか再発してなかったのです!

 

 

もう一度、言わせてください。

 

運動ってすごくないですか?!

 

僕はこの研究結果が好きで、一度聞いたときから頭にこびりついて離れないのですが、

実験を行った研究者の当初の予想では、運動をしながら抗うつ薬も服用したグループが最高の結果を出すものだと思われていたのですが、結果は大きく異なりました。

この1999年の研究で、うつ病の治療には塩酸セルトラリン(抗うつ薬)より運動の方が効果があると証明されたのです!

実際にイギリスでは、うつ病の治療の第一歩として、医者は患者にまず運動を勧めています。

運動は深刻なうつから軽いうつまで、すべてに効くのです。

 

ある医学博士は言います。

「私は運動が脳の化学反応を変えてうつを治すという考えを信用しようとしない患者には、この研究論文をコピーして渡すようにしている。この研究は、少なくとも現在の精神医学としては最善を尽くして運動の効果について白黒をはっきりさせているからだ。

この研究の成果は、ぜひとも医学校で教え、生命保険会社にも浸透させ、国中の老人ホームの掲示板に貼り出すべきだ。老人ホームでは入居者の五分の一近くがうつを患っている。

運動がゾロフト(抗うつ薬)に負けず劣らず効果があると皆が知っていれば、その病気を根本からやっつけられるはずだ」

 

運動が脳に及ぼす影響についてわかったことの大半は、うつ病の研究を通じてでした。

運動は、ほとんどの精神の問題にとって最高の治療法なのです。

 


______ 

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では、なぜ運動がここまで体にいいのか?なぜうつ病に効くのでしょうか?

 

まず、体にはモルヒネのような痛みを抑える仕組みが備わっています。

それは「エンドルフィン」という物質で、体の痛みを和らげ、幸福感をもたらします。

このエンドルフィンは、ストレスホルモンの一つとして見なされていて、きつい運動の最中に脳を落ち着かせ、筋肉の痛みを和らげることができます。

「試合中アドレナリンが出てたから怪我していることに気付かなかった」といったようなことを言う人がたまにいますが、これはストレスホルモンであるエンドルフィンのおかげでもあります。

実際に痛みを和らげているのです。

このモルヒネのような物質は、運動することで分泌され、脳がエンドルフィンで満たされるので、気分が良くなるのです!

 

また、運動することで、エンドルフィン以外にも「神経伝達物質」と呼ばれるノルアドレナリンドーパミンセロトニンといった脳内物質も増やすことができます。

運動すると、まず脳の特定の部位でノルアドレナリンが急増します。それによって脳が目覚めて働き出し、うつのせいで失いかけていた自尊心を回復することができます。

ノルアドレナリンは気分について理解するために研究された最初の神経伝達物質で、注意や知覚、意欲、覚醒に影響する信号をよく増強させます。

また、ドーパミンも放出させます。ドーパミンは気持ちを前向きにし、幸福感を高め、注意システムを活性化させます。やる気と集中力を総括している神経伝達物質です。

セロトニンも同じように運動の影響を受けます。セロトニンは自尊心を保つためになくてはならないもので、気分や衝動、怒りを調整しています。脳の機能を正常に保つ働きをしているので、よく脳の警察官と呼ばれます。ストレスを抑えることにも役立っています。

 

うつ病が発症するのはこの3つの神経伝達物質が不足するためだと言われています。

精神の状態を改善するために用いる薬のほとんどが、これら3つの神経伝達物質の一つか、あるいは複数に働きかけます。

例えば、プロザック(うつ病や不安障害、強迫神経症の原因となる脳の暴走を抑える)やリタリン(ドーパミンを増やして気持ちを落ち着ける役割)という抗うつ薬がありますが、運動をするとそれらを少々服用したような効果があります。

運動がここまで体に良いのは、それらの薬と同じく「神経伝達物質」を増やすからなのです。

 

最近、誰もが羨むであろう芸能人がうつ病で自殺をしてしまうという悲しい出来事がありましたね。

世間の人々からしてみれば、全てを兼ね備えているかのような俳優だっただけに本当に驚きでしたが、自殺は自尊心の低下からくるものだったのかもしれません。

この「自尊心の低さ」はうつ病がもたらす大きな特徴です。

周囲の人達からどんなに羨ましがられていたとしても、うつ病の本人からしたら、自分は社会の底辺で生きる価値なんて何一つないと思ってしまうのです。生きる希望を無くし、重病の人は外出することすら困難になります。

それがうつ病の本当に怖いところです……

 

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それでは、具体的にどういった運動が体に良いのでしょうか?

 

脳(と運動)のことはまだまだわかっていないことが多く、どの程度すればいいのかという詳細については人それぞれであり、まだ結論が出せていないそうなのですが、

目安としては、

 

「週5日、有酸素運動(ジョギングなど)を30分間続けること」

 

です。

少しでもいいですが、やればやるほどいいです。

理想は週6日、有酸素運動を45分~1時間です。

ただ肝心なのは、何かをするということ。始めるということです。

何をどのくらいすればいいかは人それぞれですが、研究が一貫して示しているのは、「体が健康になればなるほど、脳はたくましくなり、認知力の面でも、情緒の面でも、よく働くようになる」ということです。

体を快調にすれば、心もそれに従うのです。

もちろん、毎日終電まで仕事をしないといけなくて睡眠もろくにとれていないという方は、睡眠時間を優先させてほしいですが、

運動を始められないのは、エネルギーが湧かないからであり、エネルギーが湧かないのは運動をしないからでもあるのです。

 

ある調査によると、週に最低2、3回運動している人は、運動をほとんどしない、もしくはまったくしない人に比べて、うつ、怒り、ストレス、ひねくれた見方が極めて少ないことがわかりました。

運動すると不安が減り、うつにも神経症にもなりにくく、より社交的になれるのです。

精神医学だけでなく、心理学でも、幸福感を高める要因として、運動がすべての活動の中で最も有力だとされています。

ハーバード大学のある著名な心理学教授はこう言いました。

「運動をしないことは、うつになる薬を飲んでいるようなものだ」

 

 

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最後にちょっとだけ自分の話を。

僕は10年以上、体重の変化がほとんどなく、どんなに食べても太らないですし、逆に食べなくてもそんなに変わらないのですが、

あるとき、体重が6キロ落ちたことがありました。

いつもお昼は行きつけのお弁当屋さんで、唐揚げ弁当をご飯大盛りで買っていたのですが、大盛りが食べられなくなって普通盛りになり、気付いたら普通盛りですら半分も食べられなくなりました。

あまり詳しくは書きませんが、その頃は朝目が覚めても布団から起き上がれなくなっていました。

僕は普段、どちらかと言えば小綺麗にしている方だと思うのですが、何週間も髭を剃ることもせず、人生で唯一、無精髭を生やしていたのでその頃に僕と会った人は驚かれたかもしれません。

 

余談ですが、地元・兵庫に住んでいるお婆ちゃんは昔からとにかく僕に優しくて、何をしてもあらゆる面で褒めて肯定してくれます。

志望校に落ちようが、さぼって昼から学校へ行こうが、また犬と遊んでいるだけでも、

「えらいね!すごい!!」と褒めてくれて、とにかく自己肯定感を上げさせてくれます。

自尊心が低下していた僕にとってすごくありがたかったのですが、そんなお婆ちゃんから今までで唯一言われた否定的なことが、

「髭は剃った方がええんとちゃう~?」

でした。

 

話が少し逸れましたが、僕がそんな状態から元気になれた理由は、いくつかあるのですが、そのうちの一つが間違いなく「運動」でした。

ランニングと筋トレです。

ちなみにその頃は、腰痛にも悩まされていて、椅子に座っていてもストレスが溜まるような状態だったのですが、何ヶ月間も何をしても治らず悩まされていた腰の痛みが、運動をするようになってから嘘のように無くなったのです!

「えっ、こんなことで治るんだ!?」と本当に驚いたことを今でも覚えています。

おそらく運動をすることで血行が良くなり、腰痛が治ったのだと思います。

朝起きて、自分の体が以前より引き締まっていることを感じたとき、失われた自尊心も少し回復していることに気がつきました。

腰の痛みはそれ以来、一切ないですが、運動は今でも続けています。

お婆ちゃんからは「明るくなったね」とまた褒められてしまいました。

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参考文献:『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ.レイティ) 

 

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■関連記事

ここ2年くらい「幸せ」について考えることがマイブームでして、この記事にも「幸福感を高める要因として、運動がすべての活動の中で最も有力だとされている」と書きましたが、下記の記事は上から、

・フロー体験
・社会的な人間関係
・逆境下成長(心的外傷後成長)

についてまた別の角度から「幸せとは」について書いています。

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■オススメ書籍

 脳と運動の本と言えば、この本。分厚くて文字も少し小さいですが、名著です。

 

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